将棋の認知科学~熟達化理論~

第1章 チャンク
1 チャンクとは
チャンクは日本語に直訳したら「塊」という意味になります。
将棋には2種類にチャンクがあり、それぞれこのような意味を持っています。
・空間的チャンク
部分的な局面の駒の配置
・時間的チャンク
ほぼ必然的な一連の指し手の集まり

2 チャンク化とは
チャンク化はその名の通りチャンクを作ることです。
チャンク化は2種類ありそれぞれこのような意味を持っています。
・チャンクアップ
いくつかの空間的チャンクをまとめて
一つの局面にすること。
また、一つの局面を認識・記憶すること。
・チャンクダウン
一つの局面をいくつかの空間的チャンクに分割すること。
チャンク化は主に空間的チャンクを作ること。

3 チャンクの役割
チャンクは将棋の認知科学的研究においてとても重要な役割を持っています。
主に以下の役割を果たしています。
・局面の認識
・局面の記憶
・候補手の生成
・速い先読み
・深い先読み
・正確な局面の評価 など
チャンクは棋力に大きく影響しているのです。

第2章 対局者スクリプト
1 対局者スクリプトとは
対局者スクリプトは指し手を決定するための思考の枠組み。
実験では、被験者に思考の制限時間無制限で指すべき一手を決めるまでに
考えたことをすべて発話させた。
その結果共通している思考過程が見られた。
別の研究で、将棋を覚えたらほどんどすぐに獲得していることが示された。
2 思考過程
(1)局面の認識
駒の利きや配置、関係性などを読み取る
(2)候補手の生成
その局面に認識を用いて考慮の
対象とする次の一手を生成
(3)先読み
候補手を始点として自分の手と相手の手を
具体的に生成して局面を進行させ先読みを
終えた局面を生成する
(4)評価
先読みの結果得られた局面に対して
良し悪しの程度を評価する
(5)手の決定
先読みの結果得られた局面の
評価を基に候補手の中から
指し手を決定する

第3章 局面の認識
1 初級者の局面認識
・アマチュア5級以下
・初級者ほど駒を一つ一つ確認している
駒を一つ一つ見ながら局面を理解していく
・視線の軌跡を調べると局面全体を見ている
2 中級者の局面認識
・アマチュア初段~三段
・中級者になると、初級者に比べて局面認識にかかる
時間は短くなる
・初級者に比べると、局面を見る範囲が狭くなる
・部分的なチャンクを組み合わせるように認識している
3 上級者の局面認識
・プロ八段~トッププロ棋士
・局面全体をひとまとまりとして認識できる
・局面になった棋譜も理解した上で局面を認識している
・上級者になるにつれて局面認識のためにみる範囲が狭くなる
4 チャンクと局面認識
・チャンクが大きくなると局面の認識が速くなる
5 熟達の過程
(1)部分的な局面の知識を結びつける
(2)チャンクが大きくなる
(3)局面の認識が速くなる

第4章 候補手の生成
1 初級者の候補手生成
・部分的な認識に基づいて多くの候補手が生成される
2 中級者の候補手生成
・初級者よりは広い部分から候補手が生成される
・初級者よりは候補手が減少する
3 上級者の候補手生成
・見た瞬間に良さそうな手や悪そうな手が判断できる
・候補手に見通しとしての評価が付いている
4 チャンクと候補手生成
直観的に数手の候補手を思いつくという思考プロセスは
プレイヤが持つ空間的⁄時間的チャンク集合の中から
その局面と照合するものを選び出すプロセスである
5 熟達の過程
(1)チャンクが増える
(2)チャンクが経験に基づいて体系化される
(3)見通しを持ったチャンクになる

第5章 先読み
1 利己的先読みとは
候補手を絞って、直線的に先を読む思考過程のこと
2 初級者の先読み
一手ずつ評価しながら先読みをしているので
時間がかかりあまり深く探索出来ない
3 中級者の先読み
手筋に則った手ならば瞬時に先まで読むことができる
・中級者ほど広く読む
4 上級者の先読み
手の善し悪しがすぐに判断できるので
先読みでも瞬時に長手数を読むことが可能
・上級者ほど速く読む
5 チャンクと先読み
ある局面に対する一定の評価や結論を自分なりに持つようになって
その評価の範囲で候補手を絞れるようになると狭く深く読めるようになる
6 熟達の過程
(1)経験や学習を積むにつれ自分なりの評価基準が増える
(2)見通しを持った候補手が想起される
(3)狭く深く読めるようになる
(4)速く読めるようになる

第6章 評価
 将棋の脳科学的研究によると、主観的な状況認識と達成動機付けが出会って
 形勢判断の基準が形成されると考えられている。
 達成動機付けとはある一定の目標を達成しようとする考えのことである。
 そのため、将棋の練習においては目標設定が重要になってくる。
 目標設定の方法としてMACの原則が挙げられる。
 M=メジャラブル(測定可能性)
 A=アクショナブル(行動可能性)
 C=コンピテント(適格性)
 

Thanks for writing this thread, I learned a lot more than I knew about shogi!

チャンクについての理解ですが、
・空間的チャンクの一例として、矢倉囲いや4八金・2九飛の構えのようなものでしょうか?
・また、時間的チャンクの一例として、例えば初手から▲2六歩、△8四歩、▲2五歩、△8五歩、▲7八金、△3二金のような一連の定跡手順のようなものでしょうか?

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